(解説)旦那がいなくても腹は減る。未亡人とて食欲はある。
その日、僕は未亡人に誘われ一緒に散歩をしていた。
冬の光景は柔らかな白に溢れ、様々な感情や想いを
風景に溶かし、冬はその白さをより際立たせていた。
あるコンビニの前、彼女は立ち止まった。
「ねえ、ちょっとおなかすいてない?」
少し恥ずかしげに僕の眼を覗き込んできた。
特に腹が減ったわけではないが、そこは男として、
ちょっと何か食べたいね、と気をつかった。
彼女はうれしそうにコンビニに駆けて行き、
湯気のたった袋を抱えてでてきた。
「肉まん買っちゃった」、うれしそうに微笑んだ。
金木犀の垣根道、僕等はまだ湯気立つ肉まんを
食べながら歩いた。
「冬の散歩の楽しみって、こういうのなんだよね~」
彼女はもごもごと笑った。
僕にとっては、上気だった彼女の顔を見るほうが、
ずっと大きな歓びに、思えた。