この世で何が恥ずかしいかって、人様に自分のPCの中身を覗かれるくらい恥ずかしいことはありません。
ブラウザの履歴を覗かれたら……、デスクトップに無造作に保存された「MySweetポエム.doc」を覗かれたら……、そう思うと夜もおちおち眠れません。
とりわけ恥ずかしいのは、様々なデータが収納されておりますDドライブ(パーテーションの違いでEやFという人もいるんでしょうけど)。
これを覗かれた日にゃあ、その人物の記憶をフォーマットするか、自分の人生をctrl+Alt+Deleteするしかありません。
中央線のダイヤも乱れまくりです。
どのくらい恥ずかしいかというと、そうですね、例えば東京タワーの展望台でマッパになって「おれのタワーを見てくれ!(下ネタ的に)」と叫ぶのを"10sh(「死ぬほど」「恥ずかしい」の単位)"とすると、Dドラ覗きは"12sh"はあります。
明日からまともに外を出歩けないこと請け合いです。
ちなみに学校に行っている間に、母親がベッドの下に隠しておいたアダルティックな本を発見して、帰宅するといつの間にか処分されちゃった、どうしよう、という恥ずかしさは0.1sh程度に過ぎません。
学生の皆様にとっちゃあ一大事かもしれませんが、んなこたぁ10年20年たてば、若い頃のいい思い出だったよねえ、と思えるくらいのもの。
親戚一同集まったときの酒の肴程度のことです。
んー、といってもね、さすがにあれをね、こうね、こっそりですね、まあやっているときにですね、ドアがですね、がたんと、とかそういうのは、まあ、ちょっとした傷になるんでしょうけどね、うんうん。
やっててよかった一人暮らし。
えーとなんだっけ。
とりあえずDドライブを覗かれるというのはそのくらいの規模でshってるんですけど、よく思うのが、あれこれ見られないよう注意したり工夫をこらしていても、自分自身が死んじゃったら守りようがないですよね。
例えば通勤途中、美女が暴漢に襲われているのをとっさに助けたところ、包丁でざっくり刺されてあえなく死亡。
僕を抱きとめ美女号泣。
お、イケてるじゃん、自分(死んでるけど)。
警察やってきて一応事情聴取、親族に連絡いれないといけないからと被害者(僕ですね)宅に向かう警察と美女。
電話帳はないから、ちょっとPCを立ち上げて調べてみましょ、ウィーンピロピロ。
おや、このフォルダは何かしら? ふむふむ……えー!! こんなデータやあんなデータが!!
美女どんびき。
イケてないじゃん、自分。
最悪ですね。
あー、いや、僕が変なデータをあれこれ持っているわけじゃないっすよ、例ですからね、例。
僕のDドラはもうそれは清いものです、*.jpgで検索したら法隆寺とか曼荼羅とか、そういう画像しか出て期あせん、いえほんと。
でも思うんですけど、この世の中には「保険」というものが数多くあり、しかるべき企業や人々が自分の死後のことまであれこれ保障してくれるサービスがあります。
なら、生命保険の一種で「加入者尊厳保険」みたいなものを作ってほしいものです。
加入者が死んだとき、その人物が死ぬにおしかったと思われるよう、まずい物品はひそかに消滅させてくれる、って感じの。
もうね、プロだから迅速です。
PCはすばやくフォーマット、ベッドの下やタンスの裏にしかるべきものが隠されていないかチェック、南極の2号だか3号だか名がつくものはきっちり針いれてゴミ箱へ。
これはいいな。
あー、オレ死んでもあれ見られることねえから安心してくたばれるぜ、って気分になります。
んー、でもこれって、よく古風な推理小説なんかで「オレを殺したら自動的に証拠の書類は警察の手に渡るようにしてるからな」なんて犯人グループを脅す輩がいますが、あれに近いかもしれませんね。
大体脅しをかけたやつは、なんだかんだで死んじゃうんですけどね。
そういや関係ない話ですが、先日、雑誌かなんかで「特殊清掃員」の話を見ました。
へえ、こういう商売もあるんだなあ、なんて感心していたのですが、冠婚葬祭というのは人がいるかぎり行われることですし、これからは高齢社会、死人はわんさかでてくるわけだからわりといい商売なのかもしれません。
死んだ後の尊厳を守る、みたいな商売も、そのうち本当にでてくるかもしれませんね。